

「看板を設置したいけど、どんな法律が関係するのか分からない」「許可が必要なのか判断できない」 そんな方は少なくありません。
本記事では、それぞれの法律のポイントと、許可が必要かを自分で判断する方法を分かりやすく解説します。自分のケースが「申請が必要か」「不要か」が分かるチェックリスト付きです。法律の全体像を把握し、設置リスクを回避して、安心して集客効果の高い看板を手に入れましょう。
この記事は以下のサイトを参考にしています
看板設置に関わる主要法律(5本柱の全体像)


看板に関係する法律は、主に次の5つです。
店舗や事業所の看板設置は、単に目立つデザインにするだけでなく、これら5つの法律すべてをクリアしなければなりません。各法律には、看板の「種類」「設置場所」「構造」に応じて異なる規制や許可申請の要件が設けられています。
これらの法律は、美しい街の美観を保つことと、看板の落下などによる事故を防ぎ人々の安全を守ることを目的としています。特に、屋外広告物や建築物とみなされる看板は、厳しい基準が適用されます。
| 法律名 | 主な内容 | 担当機関 | 対象となる看板例 |
|---|---|---|---|
| 屋外広告物法 | 広告物の位置・サイズ・期間の制限と許可申請 | 都道府県・自治体(条例) |
|
| 建築基準法 | 工作物(建物)としての安全性、高さ・面積の制限 | 自治体(特定行政庁) |
|
| 道路法 | 道路の管理・保全と、道路上への設置制限(占用) | 道路管理者(国・自治体) |
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| 道路交通法 | 道路における交通の安全と円滑(使用) | 警察署 |
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| 消防法 | 火災予防と避難経路の確保 | 消防署 |
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屋外広告物法と自治体条例の関係


屋外広告物法は、屋外広告物の表示が美観風致を維持し、公衆に対する危害を防止するために定められた法律です。この法律は、都道府県や政令指定都市の自治体が定める条例によって、具体的な規制内容が定められる点が最大の特徴です。このため、隣接する市町村でも規制が異なることがあります。
看板を設置する際は、必ず管轄自治体の屋外広告物等に関する条例を確認しなければなりません。
条例で具体的に定められているのは、主に以下の項目です。
- 禁止区域:景勝地、歴史的建造物周辺、公園、高速道路の敷地など、美観上特に配慮が必要なエリアでは、原則として屋外広告物の設置が禁止されています。
- 許可区域:主に商業地域や工業地域など、広告の必要性が高いエリアです。ここでは、美観や安全を損なわないよう、看板の「面積」「高さ」「色使い」などの基準が細かく定められ、設置前に許可申請が義務付けられています。
例えば、東京都の条例では、主要な道路沿いや公園周辺で屋外広告物の面積や高さに厳しい制限が設けられています。特に、屋上広告などは、美観維持のため、特定の区域で禁止されているケースもあります。設置場所の住所を確認し、自治体の屋外広告物窓口に相談することが確実な一歩になります。
建築基準法(工作物・高さ・防火)


建築基準法は、看板が建築物や工作物として人々の安全を脅かさないための最低限の基準を定めています。地震や強風が発生した際にも倒壊・落下しないよう、構造安全性が求められます。
特に注意が必要なのは、看板が「工作物」として建築基準法の規制対象になる条件です。
- 高さ4mを超える場合:高さ4mを超える工作物(看板や広告塔など)を設置する場合、工作物としての建築基準法上の許可申請(確認申請)が必要になります。これは、台風や地震の際に倒壊するリスクが高く、人命に関わるためです。
- 建築物の屋上や側面に設置する場合:屋上看板や壁面看板でも、その面積や高さによっては建築物の一部とみなされ、風の影響(風荷重)や基礎構造の安全性が厳しく問われます。
- 防火地域内での設置:都市計画法で定められた防火地域や準防火地域内では、火災の延焼を防ぐため、看板の構造や材質に「不燃材料」や「準不燃材料」の使用が義務付けられます。
高さが4mを超える看板は工作物として安全基準を満たす必要がある
建築基準法は、看板の「物理的な安全」を確保するための法律です。特に大型看板や構造が複雑なケースでは、風荷重や基礎構造の計算が必要になるため、専門家(建築士など)に相談し、適切な設計と許可申請を行うことが必須となります。
道路法・道路交通法(占用/使用の違い)


店舗の前に看板を置く際に、最も身近に関係するのが道路法と道路交通法です。これらは道路の機能と安全性を守るための法律ですが、規制の視点が異なります。
まず、道路法は道路の構造を保全し、交通を円滑にするための法律で、「道路占用許可」が関係します。
- 道路占用(常設):道路の構造物として永続的、または長期間にわたって道路の敷地や上空を使用する場合。例として、道路上空に突き出す袖看板や、道路管理者から許可を受けた電柱広告などが該当します。
一方、道路交通法は道路上の交通の安全と円滑を図るための法律で、「道路使用許可」が関係します。
- 道路使用(一時的):道路敷地を一時的に使用して交通に影響を及ぼす場合。例として、開店時のみ店舗前の歩道に設置するA型看板やのぼり旗などが該当します。
許可を出すのは、道路法に基づく道路占用許可の場合は道路管理者(国や自治体の土木事務所など)道路交通法に基づく道路使用許可の場合は警察署です。特に、歩道部分にA型看板を置く場合、歩道を管理する自治体(道路管理者)と、交通の安全を守る警察署の両方への申請が必要となるケースもあります。
道路管理者(自治体の土木事務所など)道路交通法に基づき交通安全を管轄するのは警察署です。
許可が必要か簡単診断チェックリスト


看板設置の許可が必要か否かを自分で判断するための簡単なチェックリストを提供します。最終的な判断は自治体の条例や専門家の意見が必要ですが、初期判断として活用してください。
| 質問 | YESの場合(規制対象) | NOの場合(規制対象外の可能性あり) |
|---|---|---|
| 屋外に設置する広告物ですか? | 屋外広告物法の条例対象です。自治体の許可申請が必要です。 | 建物敷地内の窓ガラス内など、屋外から見えても屋外広告物とみなされない場合があります。 |
| 看板の高さ(支柱含む)が4mを超えますか? | 建築基準法の工作物確認申請対象です。構造安全の確認が必要です。 | 建築基準法の工作物規制は対象外です。 |
| 店舗前の歩道(道路敷地)にはみ出しますか? | 道路法の占用許可、または道路交通法の使用許可の申請が必要です。 | 敷地境界線の内側(店舗敷地内)のみに収まっています。道路関係の許可は原則不要です。 |
| 設置場所は自治体指定の禁止区域内ですか? | 設置自体が原則禁止されています。許可の例外規定を確認する必要があります。 | 禁止区域ではありません。条例の面積・高さ制限を確認します。 |
注意: 自治体によっては、「面積が〇〇平方メートル未満」や「高さが〇〇メートル未満」の自家用看板(店舗名など)に限り、許可が不要なケースもあります。詳細は必ず現地の自治体条例で確認してください。
自分のケースを3分で確認 → 看板設置の申請手続きと費用ガイドのリンクへ
よくあるグレーゾーン(店前・屋上・敷地内)


看板設置において法律解釈が難しく、専門家への相談が必要となる「グレーゾーン」があります。特にトラブルになりやすい代表的な3つの事例を解説します。
- 店舗前A型看板(歩道利用): A型看板は道路交通法の道路使用許可の対象となることが多いです。しかし、「歩道」は道路でありながら、通行の安全を確保する場所でもあります。店舗の敷地境界線をわずか数センチでも超えて歩道にはみ出している場合、道路交通法と屋外広告物法の条例に抵触する可能性があります。自治体によっては、歩道が狭い場合、たとえ道路使用許可があっても、設置を強く制限する場合があります。
- 屋上広告(高さ制限): 建物の屋上に設置する看板は、屋外広告物法の高さ・面積制限に加え、建築基準法の工作物確認申請(高さ4m超の場合)の対象となります。美観を重視する自治体では、屋上広告が条例で厳しく規制、または禁止されている区域があるため、設置前に自治体への確認が不可欠です。
- 敷地内突出看板(道路境界): 店舗敷地内に看板の支柱や基礎があるものの、看板自体が道路敷地や道路上空に突き出している袖看板や突き出し看板は、道路法の道路占用許可の申請が必要です。道路境界線の判断は非常に難しく、わずかな越境でも法律違反となるため、事前に専門家による測量や境界確認が推奨されます。
グレーゾーンでは「道路境界線」と「公共空間」の安全・美観が争点になります。法律に則った許可申請を行うことが、後のトラブル回避の鍵を握ります。
許可が必要な場合の手続きはこちら→看板設置の申請手続きと費用ガイド
まとめ:許可判断の基本
看板設置に関わる法律の全体像を再確認しましょう。
- 屋外広告物法と自治体****条例は、「どこに」「どんな面積・高さ」の看板を設置できるか、美観と安全の観点から規制しています。
- 建築基準法は、「高さ4m超の工作物」や大型看板について、構造の安全性を担保することを求めています。
- 道路法と道路交通法は、道路の敷地や上空を占用・使用する看板に許可申請を義務付けています。
この記事を通じて、店舗や事業所の看板が、どの法律の規制対象になるかの初期判断ができたはずです。
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