ウチノ看板株式会社

看板設置の許可申請・費用を徹底解説|屋外広告物・道路占用・工作物確認の手順

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店舗の集客に欠かせない看板ですが、その設置には屋外広告物許可、道路占用許可、工作物確認申請など複数の行政手続きが伴い、その複雑さから本業の時間を奪われがちです。また、手続きを誤ると不許可や罰則のリスクも生じかねません。

本記事では、多忙な経営者の皆様に代わり、看板設置の申請手順、必要書類、費用、期間をステップ形式で解説します。ご自身で申請できるケースから、費用対効果の高い専門家への依頼を判断するための材料まで網羅的にまとめました。

看板設置許可申請5ステップ

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看板設置の行政手続きは、地方自治体が定める屋外広告物条例に基づく屋外広告物許可申請を主軸として進行します。自治体によって必要な書類や審査期間に差異が見られますが、基本的な流れを把握すれば、準備すべき事項を明確にすることができます。このプロセスは、複雑な行政手続きのハードルを下げるために、5つの明確なステップに整理することが可能です。

ステップ1. 規制区域確認 → 地方自治体の条例確認

看板設置プロジェクトの最初のステップは、設置予定地が地方自治体の条例によって定められた規制区域に該当するかを確認することです。特に景観地区や風致地区、または住居専用地域などでは、看板の大きさ、色、意匠などに厳しい制限が設けられていることがあります。

この確認は、設置予定地の地方自治体の屋外広告物担当課または建築指導課のウェブサイトで、屋外広告物条例や関連する運用基準を確認することで実施できます。地域の景観を保護する目的から、規制の厳しさは自治体によって大きく異なっています。都心部や歴史的地区では、看板の面積や高さの基準が厳格に定められているケースが多く見られます。この初期段階で規制に抵触する可能性を排除することで、その後の手戻りを未然に防ぎ、全体の時間短縮につなげることが可能です。

2. 書類作成 → 図面・構造計算・誓約書

規制区域の確認が完了した後、次のステップとして各種申請書類の作成を行います。主要な提出書類には、申請書、設置場所の案内図、看板の詳細が示された設計図面、そして看板の安全性を証明する構造計算書や仕様書が含まれます。

特に構造計算書の作成は、看板の安全性、すなわち風荷重や地震に対する強度を専門的に証明する文書です。大型看板を設置する場合は、この書類の提出が義務付けられており、専門知識が求められます。また、設置場所が他者の所有地や公共の場所である場合は、設置承諾書や誓約書といった、関係者の合意を示す文書も必要となります。自治体によっては、指定された様式を用いる必要があるため、申請先の自治体サイトで最新の様式を確認することが不可欠です。

3. 窓口確認 → 広告物担当課/建築指導課

正式な申請書類の提出前に、必ず行政の窓口にて書類の事前確認(事前協議)を行うことが、スムーズな許可取得のために推奨されます。地方自治体では、屋外広告物に関する業務は、主に広告物担当課や建築指導課が担当しており、設置場所や看板の性質によって担当部署が異なる場合があります。

書類作成時に抱える疑問点や、構造計算書の細かな解釈について、事前に担当者に相談し、不備を指摘してもらうことで、本申請後の審査期間の大幅な短縮が見込めます。例えば、構造計算書の記載事項や図面の尺度といった、形式的な要件も自治体ごとに異なります。そのため、電話や訪問による事前協議は、行政手続きにおける手戻りリスクを最小限に抑える上で最も有効な手段といえるでしょう。

4. 申請提出 → 期間目安1〜3週間

書類の確認と修正が完了したら、正式に窓口へ申請書を提出します。この提出後、行政機関による本審査が開始されます。審査期間は、自治体の処理能力や申請内容の複雑性によって変動しますが、一般的な目安として1週間から3週間程度の時間が必要となります。

この審査期間中に、担当者から記載内容に関する追加の質問や修正指示が入ることがあります。これらの質問に対して迅速かつ正確に対応することが、期間を長引かせないための鍵になります。大型の看板や複雑な構造を持つ看板の場合、審査期間は上記の目安よりも長くなる傾向がありますので、設置希望日から逆算して、十分に余裕を持ったスケジュールで申請することが重要です。

5. 許可書受領 → 掲出開始日調整

審査を通過すると、地方自治体から屋外広告物許可書が交付されます。この許可書の受領をもって、看板の設置および掲示が可能となります。

許可書には、許可の有効期間が明記されており、この期間が過ぎる前に更新手続きを行う必要があります。また、看板の設置工事を行う際は、許可書に記載された許可番号や掲出開始日を確認し、これらに沿って工事を進めることが求められます。特に、道路占用許可などを同時に申請している場合は、すべての許可が揃っていることを最終確認した上で、掲出開始日を調整することが欠かせません。

看板設置の必要書類と作成例

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看板設置の許可申請には、その看板の規模、設置場所、構造の安全性を証明するための複数の書類が必要です。自治体によって指定様式と任意様式の違いがあり、適切な書類を提出することが、審査通過の鍵になります。

申請書・図面・写真・構造図・誓約書

屋外広告物許可申請で必要とされる主要な書類は以下の通りです。

屋外広告物の許可申請で求められる提出書類一覧
書類名 目的/内容 主な記載事項・要素 必要になる場面・条件 備考
申請書 申請者情報・広告物の概要を自治体指定様式で申請するための基本書類。 申請者名・住所・連絡先/広告物の種類・面積・高さ/表示期間/設置方法 など すべての申請で原則必須(自治体ごとの様式に準拠)。 最新の様式を自治体サイトから入手して使用。
設置場所の図面(案内図) 設置場所を特定し、周辺環境との位置関係を示す。 位置図(地図)/配置図(敷地内の設置位置・距離)/方位・縮尺 など 新規設置・更新ともに原則必要。 公共用地・道路に近接する場合は境界の明示が望ましい。
広告物の図面(設計図・意匠図) 看板の意匠と構造の詳細を示し、適正表示を確認する。 色・文字・材質・仕上げ/寸法(幅・高さ・厚み)/照明(種類・出力)/断面図・立面図 など 形状や意匠に変更がある場合・新設時に必須。 色番号・フォント・照明方式(内照/外照)を明記すると審査がスムーズ。
構造計算書(安全に関する書類) 風圧・地震等に対する強度を構造専門家が計算・証明する。 想定荷重・基礎仕様/部材断面・材質/許容応力度計算結果/安全率 など 高さ4m超の自立看板、屋上広告塔、大型・特殊形状などで要求される。 計算者の資格・責任範囲を明記。図面との整合を必ず確認。
承諾書/誓約書 設置場所が自己所有地でない等の場合に、関係者の同意を証明する。 土地・建物所有者名/設置許可の範囲・期間/連絡先/押印(または署名) 他人所有地・共同住宅・商業施設内、行政区画をまたぐ表示などで必要。 原本提出を求められる場合あり(写し可否は自治体指示に従う)。
現況写真 設置予定地の現在の状況を把握し、景観・安全上の影響を確認する。 遠景・近景・設置予定位置のアップ/撮影方向・撮影日 など 新設・更新ともに原則必要。 可能なら設置後イメージ(合成パース)も添付すると審査が円滑。

自治体によっては、これらの書類に指定の様式が用意されている場合と、「A4サイズで必要事項を記載すること」といった形式自由な場合があります。指定様式がある場合は、必ずそのフォーマットに従って記入しなければなりません。

図面作成において、看板の意匠(デザイン)だけでなく、構造(基礎、支柱、接合部)が明確に分かる詳細な図面が求められます。特に構造図は、安全基準への適合性を審査する上で最も重要な資料となります。

どこで様式を入手できますか?

申請に用いる指定様式は、基本的に申請先の地方自治体サイトの屋外広告物ページで取得可能です。

ほとんどの自治体が、ウェブサイトの「屋外広告物条例」や「許可申請の手引き」といったページで、申請書や誓約書のPDF、またはWordファイルをダウンロード形式で提供しています。様式は、条例改正や行政手続きの見直しにより変更される可能性があるため、申請直前に必ず最新版をダウンロードすることが重要です。もしウェブサイトで見つからない場合は、直接担当課に問い合わせることで、確実な様式を入手できます。

道路占用・使用許可の取り方

看板設置場所が公道の上空や地下、または歩道上に及ぶ場合、屋外広告物許可とは別に、道路占用許可と道路使用許可の二つの許可が必要になります。これらは、道路という公共空間の管理と交通の安全確保のために義務付けられています。

占用 vs 使用(用語比較表)

道路に関する許可の違い(占用許可/使用許可)
許可の種類 目的 権限者
道路占用許可 道路という土地空間を継続的に使用すること(看板の恒久的な設置など) 道路管理者(市・区役所の道路管理課、国土交通省など)
道路使用許可 道路上で一時的な作業や活動を行うこと(看板設置工事、イベント開催など) 警察署(交通課)

 

道路占用許可は、看板の支柱や突出した部分が道路の上空や敷地内に存在する場合に、その継続的な使用権を確保するために必要です。一方で、道路使用許可は、看板の設置工事を行う際に、資材の搬入やクレーン作業などで一時的に道路や歩道を使用する場合に必要とされます。

同時申請する際の流れ

道路占用と道路使用の許可が必要な場合、通常、以下のステップで同時並行的に申請を進めていきます。

  1. 道路占用許可申請(道路管理者): まず、看板の構造と設置場所が確定した段階で、市・区役所の道路管理課や土木事務所といった道路管理者に対して道路占用許可申請を行います。申請には、占用物件の図面、設置場所の案内図、そして屋外広告物許可申請書の写しが必要となる場合があります。
  2. 道路使用許可申請(警察署): 道路占用許可の見込みが得られた段階、または申請と並行して、管轄の警察署の交通課に道路使用許可申請を行います。この許可は主に工事の日時、作業の方法、交通規制の有無に関わるため、工事の工程表や交通誘導計画図といった安全対策に関する書類が求められます。

これらの申請は、それぞれ異なる行政機関への提出が必要ですが、行政書士などの専門家に依頼することで、複数の窓口への提出作業を一元的に代行してもらうことが可能です。この同時並行的なプロセスを効率的に進めることが、許可取得期間の最短化につながります。

工作物確認申請と安全基準

設置する看板が一定の規模を超える場合、建築基準法に基づき、建築物と同様に工作物確認申請が求められます。これは、看板の構造安全性を公的に保証し、風荷重や地震などの外力に対する安全基準を満たしていることを確認するための重要な手続きです。

条件:「高さ4m以上」「大型鉄骨看板」など

工作物確認申請が必要となる看板の主な条件は、建築基準法によって以下のように定められています。

  • 高さ4mを超える広告塔または広告板(鉄骨造などで自立するもの)。
  • 建築物の屋上に設置するもので、その高さや面積が特定規模を超えるもの。
  • その他、地方自治体の条例で定められた規模を超えるもの。

これらの特定工作物に該当する場合、建築主事または指定確認検査機関による構造の安全性に関する審査を受けなければなりません。この審査には、専門的な構造設計と構造計算書の提出が不可欠であり、建築士や構造設計者といった専門家の関与が必須となります。

構造安全と風荷重の基準をシンプルに解説

工作物確認申請において最も重視されるのは、看板の構造安全です。看板は、その性質上、高い位置に設置されることが多く、風荷重や地震力といった自然の力の影響を強く受けます。

風荷重とは、風が看板に当たることで生じる力であり、設置場所の風速や看板の受風面積に基づいて計算されます。日本の建築基準法では、地域ごとの基準風速が定められており、これに基づいて看板が倒壊しないための適切な基礎構造や支柱の強度を確保することが求められています。

この基準への適合性を証明するのが、詳細な構造計算書です。申請時には、使用する鋼材の強度や接合部の仕様までを詳細に記載し、専門的な視点からの安全性を証明する必要があります。

注意点:「確認不要でも安全基準違反は罰則対象」

たとえ工作物確認申請が不要な規模の看板であったとしても、安全基準の遵守は常に義務付けられています。建築基準法や各自治体の条例が定める構造安全基準を満たさない看板を設置することは、重大な事故に繋がるリスクを伴うだけでなく、行政による是正命令や罰則の対象となります。

具体的には、老朽化による落下や強風による倒壊は、人命に関わる事故に直結します。設置後も、定期的な安全点検とメンテナンスが不可欠であり、これらを怠ることは、企業の社会的責任を問われることになります。許可申請が不要だからといって、安全性を軽視してはいけません。

看板の禁止広告物と不許可の回避策

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看板設置の許可は、場所やデザインによって不許可となるケースが存在します。特に、景観を保護する観点から、禁止場所や禁止広告物が条例で厳しく定められている自治体が多数あります。

禁止場所例とNGデザイン例

看板の不許可につながる主な原因は、以下の禁止場所とNGデザインに集約されます

屋外広告物の「禁止場所」の例
区分 具体例 注意点/補足
史跡・文化財 歴史的建造物や文化財の敷地および周辺区域 景観・保存の観点から原則禁止。周辺区域の範囲は自治体の指定に従う。
公共工作物 街路樹、公衆電話ボックスなど公共性の高い工作物 保全・安全上の理由から掲出不可。器物損壊・占用扱いとなる場合あり。
景観保護区域 自然公園、風致地区などの景観保護区域 区域指定の内容により一律禁止または厳格な制限。
行政関連施設 特定の行政庁舎や公共施設の壁面・屋上 公的施設の中立性・安全確保のため原則禁止。

屋外広告物の「NGデザイン」の例
区分 具体例 注意点/補足
極端な色彩 赤色や原色を過度に使用し、周囲の景観と調和しない極端に派手な色彩 色彩基準は自治体の景観ガイドラインに準拠。彩度・明度の指定がある場合あり。
過度な照明・動き 点滅や流動が激しい照明で、交通の安全を妨げるおそれがあるもの 点滅速度・輝度・発光時間帯の制限対象。交差点付近などは特に厳格。
内容の不適切性 公序良俗に反する、または誤解を招くような内容・表現 誇大表示・紛らわしい表示は不可。表現基準は条例・審査基準に従う。

多くの自治体では、景観計画に基づき、色彩基準や意匠のガイドラインを設けています。これらの基準は、単なる美しさだけでなく、地域の文化的・歴史的背景を尊重するために不可欠です。

是正命令~撤去までの流れ

禁止広告物や無許可の看板を設置した場合、行政による以下の手続きが進行します。

  1. 指導・是正命令: 地方自治体の屋外広告物担当課から、違反の通知が届き、一定期間内の**是正(修正または撤去)**を命じられます。
  2. 代執行: 是正命令に従わない場合、自治体が行政代執行として看板を強制的に撤去し、その費用を設置者に請求します。
  3. 罰則: 悪質なケースでは、屋外広告物条例違反として、罰金などの罰則が科される可能性もあります。

このようなリスクを回避し、確実に許可を得るためには、計画の初期段階で屋外広告物の専門家に相談し、設置予定地の規制とガイドラインを正確に把握することが最も重要です。

費用・リードタイムの実態

看板設置の許可申請にかかる費用と期間は、主に行政手数料と専門家への代行費用によって構成されます。全体の費用感と期間を正確に把握することで、計画の予算とスケジュールを適切に管理できます。

行政手数料/代行費/期間の目安
項目 費用の目安 期間の目安 備考
屋外広告物申請(行政手数料) 3,000円〜15,000円 1〜3週間 看板の面積や自治体によって変動します。
道路占用許可申請(行政手数料) 面積・期間により個別算出 1〜2週間 道路管理者(市・区役所など)に支払います。
工作物確認申請(行政手数料) 規模による(数万円) 2〜4週間 高さ4m超の看板など、大型のものに必要です。
専門家への代行費用 5万円〜10万円/件 申請内容による 行政書士・看板業者・建築士などへの依頼費用です。
全体のリードタイム(申請開始から許可まで) 2〜4週間 書類準備期間を含めるとさらに時間を要します。

行政手数料は、看板の面積や表示期間に応じて地方自治体が定めた料金であり、設置者が直接行政に支払う費用です。一方、代行費用は、複雑な書類作成や窓口での折衝を専門家に依頼する際に発生するサービス費用となります。

代行費用は、工作物確認申請が必要となる大型で構造が複雑な看板の場合や、複数の自治体にまたがる申請の場合に高くなる傾向があります。しかし、専門家に依頼することで、審査期間中の手戻りリスクを大幅に減らし、結果的に人件費や機会損失を防ぐことができるため、総コストで見れば費用対効果が高いケースが多々あります。

申請を業者に依頼すべきケースと選び方

行政手続きは複雑であり、本業に集中したい場合は専門家への依頼が最も効率的です。特に、以下に挙げる3つのケースに該当する場合は、専門業者への代行を強く推奨します。

依頼推奨ケース3つ

専門業者への代行は、以下の3つのケースで特にその効果を発揮します。

  1. 高さ・構造が複雑: 高さ4m以上で工作物確認申請が必要な看板や、屋上広告物など、構造計算と建築基準法への適合証明が求められるケースです。これらの申請は、構造設計の専門知識が必須であり、一般の看板業者や設置者では対応が困難です。
  2. 自治体が複数にまたがる: 店舗展開などで複数の地方自治体に同じ仕様の看板を同時期に設置する場合、それぞれの自治体の条例や様式の違いに対応する必要があります。専門業者は、各自治体のローカルルールを熟知しているため、一貫した品質とスケジュールで申請を進めることが可能です。
  3. 時間が取れない: 本業が多忙で、行政窓口への相談や書類作成に時間を割けないケースです。行政手続きには、事前協議や軽微な修正のための窓口訪問が必要になることがあり、専門家が代行することで、設置者は本業に集中できます。

まとめ:確実に許可を取るための最短ルート

看板設置の許可を確実に、そして最短で取得するためには、計画段階で行政手続きの全貌を把握し、不許可リスクを排除する戦略的なアプローチが不可欠です。

本記事で解説した5段階チェックリスト(規制区域確認 → 書類作成 → 窓口確認 → 申請提出 → 許可書受領)に従ってプロセスを管理し、特に構造安全と禁止区域に関する事前確認を徹底することが成功への鍵となります。

設置者は、まず申請手順を理解し、費用の全体像を把握したら、専門家への依頼を検討することで、本業に集中しながら、最も確実なルートで看板設置を実現できるでしょう。

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看板設置の許可申請・費用を徹底解説|屋外広告物・道路占用・工作物確認の手順

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店舗の集客に欠かせない看板ですが、その設置には屋外広告物許可、道路占用許可、工作物確認申請など複数の行政手続きが伴い、その複雑さから本業の時間を奪われがちです。また、手続きを誤ると不許可や罰則のリスクも生じかねません。

本記事では、多忙な経営者の皆様に代わり、看板設置の申請手順、必要書類、費用、期間をステップ形式で解説します。ご自身で申請できるケースから、費用対効果の高い専門家への依頼を判断するための材料まで網羅的にまとめました。

看板設置許可申請5ステップ

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看板設置の行政手続きは、地方自治体が定める屋外広告物条例に基づく屋外広告物許可申請を主軸として進行します。自治体によって必要な書類や審査期間に差異が見られますが、基本的な流れを把握すれば、準備すべき事項を明確にすることができます。このプロセスは、複雑な行政手続きのハードルを下げるために、5つの明確なステップに整理することが可能です。

ステップ1. 規制区域確認 → 地方自治体の条例確認

看板設置プロジェクトの最初のステップは、設置予定地が地方自治体の条例によって定められた規制区域に該当するかを確認することです。特に景観地区や風致地区、または住居専用地域などでは、看板の大きさ、色、意匠などに厳しい制限が設けられていることがあります。

この確認は、設置予定地の地方自治体の屋外広告物担当課または建築指導課のウェブサイトで、屋外広告物条例や関連する運用基準を確認することで実施できます。地域の景観を保護する目的から、規制の厳しさは自治体によって大きく異なっています。都心部や歴史的地区では、看板の面積や高さの基準が厳格に定められているケースが多く見られます。この初期段階で規制に抵触する可能性を排除することで、その後の手戻りを未然に防ぎ、全体の時間短縮につなげることが可能です。

2. 書類作成 → 図面・構造計算・誓約書

規制区域の確認が完了した後、次のステップとして各種申請書類の作成を行います。主要な提出書類には、申請書、設置場所の案内図、看板の詳細が示された設計図面、そして看板の安全性を証明する構造計算書や仕様書が含まれます。

特に構造計算書の作成は、看板の安全性、すなわち風荷重や地震に対する強度を専門的に証明する文書です。大型看板を設置する場合は、この書類の提出が義務付けられており、専門知識が求められます。また、設置場所が他者の所有地や公共の場所である場合は、設置承諾書や誓約書といった、関係者の合意を示す文書も必要となります。自治体によっては、指定された様式を用いる必要があるため、申請先の自治体サイトで最新の様式を確認することが不可欠です。

3. 窓口確認 → 広告物担当課/建築指導課

正式な申請書類の提出前に、必ず行政の窓口にて書類の事前確認(事前協議)を行うことが、スムーズな許可取得のために推奨されます。地方自治体では、屋外広告物に関する業務は、主に広告物担当課や建築指導課が担当しており、設置場所や看板の性質によって担当部署が異なる場合があります。

書類作成時に抱える疑問点や、構造計算書の細かな解釈について、事前に担当者に相談し、不備を指摘してもらうことで、本申請後の審査期間の大幅な短縮が見込めます。例えば、構造計算書の記載事項や図面の尺度といった、形式的な要件も自治体ごとに異なります。そのため、電話や訪問による事前協議は、行政手続きにおける手戻りリスクを最小限に抑える上で最も有効な手段といえるでしょう。

4. 申請提出 → 期間目安1〜3週間

書類の確認と修正が完了したら、正式に窓口へ申請書を提出します。この提出後、行政機関による本審査が開始されます。審査期間は、自治体の処理能力や申請内容の複雑性によって変動しますが、一般的な目安として1週間から3週間程度の時間が必要となります。

この審査期間中に、担当者から記載内容に関する追加の質問や修正指示が入ることがあります。これらの質問に対して迅速かつ正確に対応することが、期間を長引かせないための鍵になります。大型の看板や複雑な構造を持つ看板の場合、審査期間は上記の目安よりも長くなる傾向がありますので、設置希望日から逆算して、十分に余裕を持ったスケジュールで申請することが重要です。

5. 許可書受領 → 掲出開始日調整

審査を通過すると、地方自治体から屋外広告物許可書が交付されます。この許可書の受領をもって、看板の設置および掲示が可能となります。

許可書には、許可の有効期間が明記されており、この期間が過ぎる前に更新手続きを行う必要があります。また、看板の設置工事を行う際は、許可書に記載された許可番号や掲出開始日を確認し、これらに沿って工事を進めることが求められます。特に、道路占用許可などを同時に申請している場合は、すべての許可が揃っていることを最終確認した上で、掲出開始日を調整することが欠かせません。

看板設置の必要書類と作成例

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看板設置の許可申請には、その看板の規模、設置場所、構造の安全性を証明するための複数の書類が必要です。自治体によって指定様式と任意様式の違いがあり、適切な書類を提出することが、審査通過の鍵になります。

申請書・図面・写真・構造図・誓約書

屋外広告物許可申請で必要とされる主要な書類は以下の通りです。

屋外広告物の許可申請で求められる提出書類一覧
書類名 目的/内容 主な記載事項・要素 必要になる場面・条件 備考
申請書 申請者情報・広告物の概要を自治体指定様式で申請するための基本書類。 申請者名・住所・連絡先/広告物の種類・面積・高さ/表示期間/設置方法 など すべての申請で原則必須(自治体ごとの様式に準拠)。 最新の様式を自治体サイトから入手して使用。
設置場所の図面(案内図) 設置場所を特定し、周辺環境との位置関係を示す。 位置図(地図)/配置図(敷地内の設置位置・距離)/方位・縮尺 など 新規設置・更新ともに原則必要。 公共用地・道路に近接する場合は境界の明示が望ましい。
広告物の図面(設計図・意匠図) 看板の意匠と構造の詳細を示し、適正表示を確認する。 色・文字・材質・仕上げ/寸法(幅・高さ・厚み)/照明(種類・出力)/断面図・立面図 など 形状や意匠に変更がある場合・新設時に必須。 色番号・フォント・照明方式(内照/外照)を明記すると審査がスムーズ。
構造計算書(安全に関する書類) 風圧・地震等に対する強度を構造専門家が計算・証明する。 想定荷重・基礎仕様/部材断面・材質/許容応力度計算結果/安全率 など 高さ4m超の自立看板、屋上広告塔、大型・特殊形状などで要求される。 計算者の資格・責任範囲を明記。図面との整合を必ず確認。
承諾書/誓約書 設置場所が自己所有地でない等の場合に、関係者の同意を証明する。 土地・建物所有者名/設置許可の範囲・期間/連絡先/押印(または署名) 他人所有地・共同住宅・商業施設内、行政区画をまたぐ表示などで必要。 原本提出を求められる場合あり(写し可否は自治体指示に従う)。
現況写真 設置予定地の現在の状況を把握し、景観・安全上の影響を確認する。 遠景・近景・設置予定位置のアップ/撮影方向・撮影日 など 新設・更新ともに原則必要。 可能なら設置後イメージ(合成パース)も添付すると審査が円滑。

自治体によっては、これらの書類に指定の様式が用意されている場合と、「A4サイズで必要事項を記載すること」といった形式自由な場合があります。指定様式がある場合は、必ずそのフォーマットに従って記入しなければなりません。

図面作成において、看板の意匠(デザイン)だけでなく、構造(基礎、支柱、接合部)が明確に分かる詳細な図面が求められます。特に構造図は、安全基準への適合性を審査する上で最も重要な資料となります。

どこで様式を入手できますか?

申請に用いる指定様式は、基本的に申請先の地方自治体サイトの屋外広告物ページで取得可能です。

ほとんどの自治体が、ウェブサイトの「屋外広告物条例」や「許可申請の手引き」といったページで、申請書や誓約書のPDF、またはWordファイルをダウンロード形式で提供しています。様式は、条例改正や行政手続きの見直しにより変更される可能性があるため、申請直前に必ず最新版をダウンロードすることが重要です。もしウェブサイトで見つからない場合は、直接担当課に問い合わせることで、確実な様式を入手できます。

道路占用・使用許可の取り方

看板設置場所が公道の上空や地下、または歩道上に及ぶ場合、屋外広告物許可とは別に、道路占用許可と道路使用許可の二つの許可が必要になります。これらは、道路という公共空間の管理と交通の安全確保のために義務付けられています。

占用 vs 使用(用語比較表)

道路に関する許可の違い(占用許可/使用許可)
許可の種類 目的 権限者
道路占用許可 道路という土地空間を継続的に使用すること(看板の恒久的な設置など) 道路管理者(市・区役所の道路管理課、国土交通省など)
道路使用許可 道路上で一時的な作業や活動を行うこと(看板設置工事、イベント開催など) 警察署(交通課)

 

道路占用許可は、看板の支柱や突出した部分が道路の上空や敷地内に存在する場合に、その継続的な使用権を確保するために必要です。一方で、道路使用許可は、看板の設置工事を行う際に、資材の搬入やクレーン作業などで一時的に道路や歩道を使用する場合に必要とされます。

同時申請する際の流れ

道路占用と道路使用の許可が必要な場合、通常、以下のステップで同時並行的に申請を進めていきます。

  1. 道路占用許可申請(道路管理者): まず、看板の構造と設置場所が確定した段階で、市・区役所の道路管理課や土木事務所といった道路管理者に対して道路占用許可申請を行います。申請には、占用物件の図面、設置場所の案内図、そして屋外広告物許可申請書の写しが必要となる場合があります。
  2. 道路使用許可申請(警察署): 道路占用許可の見込みが得られた段階、または申請と並行して、管轄の警察署の交通課に道路使用許可申請を行います。この許可は主に工事の日時、作業の方法、交通規制の有無に関わるため、工事の工程表や交通誘導計画図といった安全対策に関する書類が求められます。

これらの申請は、それぞれ異なる行政機関への提出が必要ですが、行政書士などの専門家に依頼することで、複数の窓口への提出作業を一元的に代行してもらうことが可能です。この同時並行的なプロセスを効率的に進めることが、許可取得期間の最短化につながります。

工作物確認申請と安全基準

設置する看板が一定の規模を超える場合、建築基準法に基づき、建築物と同様に工作物確認申請が求められます。これは、看板の構造安全性を公的に保証し、風荷重や地震などの外力に対する安全基準を満たしていることを確認するための重要な手続きです。

条件:「高さ4m以上」「大型鉄骨看板」など

工作物確認申請が必要となる看板の主な条件は、建築基準法によって以下のように定められています。

  • 高さ4mを超える広告塔または広告板(鉄骨造などで自立するもの)。
  • 建築物の屋上に設置するもので、その高さや面積が特定規模を超えるもの。
  • その他、地方自治体の条例で定められた規模を超えるもの。

これらの特定工作物に該当する場合、建築主事または指定確認検査機関による構造の安全性に関する審査を受けなければなりません。この審査には、専門的な構造設計と構造計算書の提出が不可欠であり、建築士や構造設計者といった専門家の関与が必須となります。

構造安全と風荷重の基準をシンプルに解説

工作物確認申請において最も重視されるのは、看板の構造安全です。看板は、その性質上、高い位置に設置されることが多く、風荷重や地震力といった自然の力の影響を強く受けます。

風荷重とは、風が看板に当たることで生じる力であり、設置場所の風速や看板の受風面積に基づいて計算されます。日本の建築基準法では、地域ごとの基準風速が定められており、これに基づいて看板が倒壊しないための適切な基礎構造や支柱の強度を確保することが求められています。

この基準への適合性を証明するのが、詳細な構造計算書です。申請時には、使用する鋼材の強度や接合部の仕様までを詳細に記載し、専門的な視点からの安全性を証明する必要があります。

注意点:「確認不要でも安全基準違反は罰則対象」

たとえ工作物確認申請が不要な規模の看板であったとしても、安全基準の遵守は常に義務付けられています。建築基準法や各自治体の条例が定める構造安全基準を満たさない看板を設置することは、重大な事故に繋がるリスクを伴うだけでなく、行政による是正命令や罰則の対象となります。

具体的には、老朽化による落下や強風による倒壊は、人命に関わる事故に直結します。設置後も、定期的な安全点検とメンテナンスが不可欠であり、これらを怠ることは、企業の社会的責任を問われることになります。許可申請が不要だからといって、安全性を軽視してはいけません。

看板の禁止広告物と不許可の回避策

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看板設置の許可は、場所やデザインによって不許可となるケースが存在します。特に、景観を保護する観点から、禁止場所や禁止広告物が条例で厳しく定められている自治体が多数あります。

禁止場所例とNGデザイン例

看板の不許可につながる主な原因は、以下の禁止場所とNGデザインに集約されます

屋外広告物の「禁止場所」の例
区分 具体例 注意点/補足
史跡・文化財 歴史的建造物や文化財の敷地および周辺区域 景観・保存の観点から原則禁止。周辺区域の範囲は自治体の指定に従う。
公共工作物 街路樹、公衆電話ボックスなど公共性の高い工作物 保全・安全上の理由から掲出不可。器物損壊・占用扱いとなる場合あり。
景観保護区域 自然公園、風致地区などの景観保護区域 区域指定の内容により一律禁止または厳格な制限。
行政関連施設 特定の行政庁舎や公共施設の壁面・屋上 公的施設の中立性・安全確保のため原則禁止。

屋外広告物の「NGデザイン」の例
区分 具体例 注意点/補足
極端な色彩 赤色や原色を過度に使用し、周囲の景観と調和しない極端に派手な色彩 色彩基準は自治体の景観ガイドラインに準拠。彩度・明度の指定がある場合あり。
過度な照明・動き 点滅や流動が激しい照明で、交通の安全を妨げるおそれがあるもの 点滅速度・輝度・発光時間帯の制限対象。交差点付近などは特に厳格。
内容の不適切性 公序良俗に反する、または誤解を招くような内容・表現 誇大表示・紛らわしい表示は不可。表現基準は条例・審査基準に従う。

多くの自治体では、景観計画に基づき、色彩基準や意匠のガイドラインを設けています。これらの基準は、単なる美しさだけでなく、地域の文化的・歴史的背景を尊重するために不可欠です。

是正命令~撤去までの流れ

禁止広告物や無許可の看板を設置した場合、行政による以下の手続きが進行します。

  1. 指導・是正命令: 地方自治体の屋外広告物担当課から、違反の通知が届き、一定期間内の**是正(修正または撤去)**を命じられます。
  2. 代執行: 是正命令に従わない場合、自治体が行政代執行として看板を強制的に撤去し、その費用を設置者に請求します。
  3. 罰則: 悪質なケースでは、屋外広告物条例違反として、罰金などの罰則が科される可能性もあります。

このようなリスクを回避し、確実に許可を得るためには、計画の初期段階で屋外広告物の専門家に相談し、設置予定地の規制とガイドラインを正確に把握することが最も重要です。

費用・リードタイムの実態

看板設置の許可申請にかかる費用と期間は、主に行政手数料と専門家への代行費用によって構成されます。全体の費用感と期間を正確に把握することで、計画の予算とスケジュールを適切に管理できます。

行政手数料/代行費/期間の目安
項目 費用の目安 期間の目安 備考
屋外広告物申請(行政手数料) 3,000円〜15,000円 1〜3週間 看板の面積や自治体によって変動します。
道路占用許可申請(行政手数料) 面積・期間により個別算出 1〜2週間 道路管理者(市・区役所など)に支払います。
工作物確認申請(行政手数料) 規模による(数万円) 2〜4週間 高さ4m超の看板など、大型のものに必要です。
専門家への代行費用 5万円〜10万円/件 申請内容による 行政書士・看板業者・建築士などへの依頼費用です。
全体のリードタイム(申請開始から許可まで) 2〜4週間 書類準備期間を含めるとさらに時間を要します。

行政手数料は、看板の面積や表示期間に応じて地方自治体が定めた料金であり、設置者が直接行政に支払う費用です。一方、代行費用は、複雑な書類作成や窓口での折衝を専門家に依頼する際に発生するサービス費用となります。

代行費用は、工作物確認申請が必要となる大型で構造が複雑な看板の場合や、複数の自治体にまたがる申請の場合に高くなる傾向があります。しかし、専門家に依頼することで、審査期間中の手戻りリスクを大幅に減らし、結果的に人件費や機会損失を防ぐことができるため、総コストで見れば費用対効果が高いケースが多々あります。

申請を業者に依頼すべきケースと選び方

行政手続きは複雑であり、本業に集中したい場合は専門家への依頼が最も効率的です。特に、以下に挙げる3つのケースに該当する場合は、専門業者への代行を強く推奨します。

依頼推奨ケース3つ

専門業者への代行は、以下の3つのケースで特にその効果を発揮します。

  1. 高さ・構造が複雑: 高さ4m以上で工作物確認申請が必要な看板や、屋上広告物など、構造計算と建築基準法への適合証明が求められるケースです。これらの申請は、構造設計の専門知識が必須であり、一般の看板業者や設置者では対応が困難です。
  2. 自治体が複数にまたがる: 店舗展開などで複数の地方自治体に同じ仕様の看板を同時期に設置する場合、それぞれの自治体の条例や様式の違いに対応する必要があります。専門業者は、各自治体のローカルルールを熟知しているため、一貫した品質とスケジュールで申請を進めることが可能です。
  3. 時間が取れない: 本業が多忙で、行政窓口への相談や書類作成に時間を割けないケースです。行政手続きには、事前協議や軽微な修正のための窓口訪問が必要になることがあり、専門家が代行することで、設置者は本業に集中できます。

まとめ:確実に許可を取るための最短ルート

看板設置の許可を確実に、そして最短で取得するためには、計画段階で行政手続きの全貌を把握し、不許可リスクを排除する戦略的なアプローチが不可欠です。

本記事で解説した5段階チェックリスト(規制区域確認 → 書類作成 → 窓口確認 → 申請提出 → 許可書受領)に従ってプロセスを管理し、特に構造安全と禁止区域に関する事前確認を徹底することが成功への鍵となります。

設置者は、まず申請手順を理解し、費用の全体像を把握したら、専門家への依頼を検討することで、本業に集中しながら、最も確実なルートで看板設置を実現できるでしょう。

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